増えつつある改葬とその理由
改葬はお墓を別の場所に引っ越しさせる事ですが、年々改葬の件数が増えてきています。
厚生労働省「令和2年度衛生行政報告例」によると、2020年に11万件を超えている改葬件数です。※
様々な理由で改葬を検討している人が増えてきているのがわかります。
場所の問題、管理者や後継者に関する問題点といった背景があるようです。
お墓の場所が離れている問題
お墓を管理していく上で出てくるのが場所の問題です。
例えば実家の近くに建てていたお墓があるけれど、実家を出て離れた場所に住んでいるといった状況の場合、お墓参りに行く機会自体も少なくなってきます。
やがてお墓の管理を任されたものの、場所的な都合により管理しにくいという問題点が出てくるようになるのです。
この他にも転居したという理由でお墓が遠くなる例もあります。
そこで「お墓の管理がしやすい場所に移動したほうが良いのではないか」と考えるようになるのです。
供養はしたいが遠くにあるのでなかなかお墓にいけない、そんな状況の人が通いやすい場所にお墓を建てて改葬を行います。
管理者が高齢化していく問題
お墓に関する場所の問題で出てくるのが管理者の高齢化です。
若い頃は遠方でもお墓参りに行く事が出来たけど、高齢になっていくと共に体力的に遠距離移動が辛いと感じるようになります。
車の運転に関しても免許返納など、移動が難しくなってくる問題も出てくるのです。
もし近い場所にあったとしても、坂を上った高い位置にある、足場が悪い場所にあるなど通いにくい場所にお墓があるとお墓の管理がしにくくなってくる場合があります。
高齢になってきている場合は以前のようにお墓に通う事が出来なくなってくるかもしれません。
後継者がいなくなる問題
そしてお墓を管理している人の中にはお墓を継いでいく後継者がいないという問題を抱えている人もいます。
後継者がいないとそのまま無縁仏になる可能性も出てくるので対策が必要です。
少子化による影響もありますが、後継者不在という理由で永代供養のお墓に改葬するという例が増えつつあります。
永代供養墓へ改葬する事で霊園や寺院がお墓の管理、供養を行ってくれる事になるので安心できる選択肢の一つです。
改葬と墓じまいは何が違うのか
改葬と似ているように聞こえるのは墓じまいがあります。
改葬と墓じまいは何が違うのでしょうか。
改葬は別の場所に墓を移動する事
改葬は手続きを行った上でお墓を引っ越しさせる事です。
お墓の土地を購入してから、遺骨と墓石を一緒に移動させる場合もありますし、新設させたお墓へ埋葬するという方法を選ぶ人もいます。
他にも納骨堂に移動させる、自宅で供養するという例もありますし、後継者問題がある場合は永代供養墓に改葬するという例もあります。
ご遺骨の一部を移動させる分骨がありますが、改葬の分類です。
墓じまいはお墓を撤去して処分します
墓じまいは遺骨をお墓から取り出した上でお墓を撤去する形で処分を行う方法です。
お墓の後継者がいない場合、そして後継者はいるけれど子供に経済的な負担をかけたくないと考えている人が墓じまいを行っています。
墓地管理者へは墓じまいを行う事を伝え、更地になった土地を墓地の管理者に返却して完了です。
親族には墓じまいを行う事を話して同意を得ておくようにしないとトラブルが起きる場合がありますのでご注意ください。
墓じまいの後は手元供養をする、散骨という形で供養するという例もあります。
改葬を行う前に考えておきたい:改葬を行うメリットとデメリット
改葬を行うことでメリットとデメリット、両方出てきます。
改葬をしてよかったと感じるメリット
・お墓参りしやすくなる
・お墓の管理もしやすくなる
・お墓の後継者問題が解決する
・お墓の選択次第では、霊園使用料や管理料の費用削減に
改葬をした事でデメリットが出る事もあります
・改葬費用がかかる
・樹木葬に改葬した場合は後々遺骨を回収できない
・合祀する永代供養墓の場合は後々遺骨を回収できない
・親族とトラブルになる場合がある
・檀家寺院とトラブルになる場合がある
・先祖代々のお墓を失った気持ち的な負担がある
特に注意したいのが檀家に入っている寺院とのトラブルです。
檀家を辞める際にお寺に「離壇料」を払う習慣があります。
どのくらいお付き合いがあるかや地域的なもので金額は変わってきます。
これまでお世話になったお礼とお布施が含まれていますが、この時に高額なお布施を要求してくるという例もあるのです。
この部分でトラブルが起きると、埋葬証明書(納骨証明書)の作成をしてもらえずに改葬手続きがストップしてしまう事もありますので、慎重に話し合いを進めるようにしてください。
改葬ではどのくらい費用がかかるのか
改葬ではある程度まとまった金額が必要になる事が多いです。
一般的な目安をご紹介していきます。
・埋葬証明書(納骨証明書)発行手数料 1,000円前後
・改葬許可申請書 手数料 お骨一体につき300円前後
・離檀料(りだんりょう) 檀家寺院との話し合いで決められます
・新しく墓石を新設する場合 約200万円~300万円
・墓石の撤去 1平方メートルあたり20万円前後
・石材店 遺骨の取り出しと埋葬工賃 各3万円前後
・お墓の閉眼法要・開眼法要 お布施となるので金額に違いが出てきます
改葬を行う手順や手続き
改葬はすぐに行えるわけではなく、法的な手続きも含まれています。
改葬を行う場合、どのような手順や流れになるのか、どのような手続きが必要かを解説していきます。
親族と墓地管理者に相談
改葬を行う際に一番出てくるトラブルは親族と墓地管理者とのトラブルです。
最初に改葬を検討している事を伝えて、同意を得る必要があります。
特に親族の中には先祖代々のお墓を大切に思っている人もいるかもしれません。
墓地管理者の場合も檀家をどうするかでもめる例があります。
寺院から同意を得られないと手続きを行えなくなるので、慎重に話し合いを行いましょう。
納骨先の検討・契約
改葬先でどのような供養方法にするのかを検討します。
新しくお墓を新設するという選択肢もありますし、永代供養を選択するという選択をする場合もあるかもしれません。
新しい納骨先を決めたら契約を行い受入証明書(墓所使用承諾証)を発行してもらいます。
石材店の検討・契約
改葬先のお墓を新設する場合は石材店に依頼します。
もし永代供養や海洋散骨などお墓を持たない選択肢であったとしても墓石の撤去を行う必要がありますので石材店を探しておくと良いです。
同じ作業内容であったとしても石材店ごとにかかってくる費用が大きく変わってきます。
そのため石材店の検討はいくつか見積りをしてもらった上で決めるようにしたほうが良いでしょう。
改葬許可申請書を作成してもらう
改葬元となる現在のお墓がある市区町村役場で改葬許可申請書を入手して必要事項を記入します。
市区町村によって書類の作成方法に違いがあるので、あらかじめ確認をしておいた方が良いでしょう。
窓口で書類を受け取る他、市区町村のホームページからダウンロードできる場合もあります。
墓地管理者に埋葬証明書を発行してもらう
現在の墓地管理者に改葬を申し出て埋葬証明書(納骨証明書)を発行してもらいます。
現在の墓地がある市区町に必要書類を提出
現在の墓地がある市区町に以下の書類を提出します。
・改葬許可申請書
・受入証明書
・埋葬証明書
上記書類の提出後、改葬許可証を発行してもらいます。
改葬するための閉眼法要を行う
遺骨の移動をするために閉眼法要を行います。
閉眼法要はお墓から魂を抜くために行いますが、霊園を管理する寺院、もしくはお付き合いのある菩提寺さんにお願いして法要を行います。
新しい納骨先で法要を行う
新しい納骨先に改葬許可証を提出してお墓に魂を入れる開眼法要を行います。
納骨先の法要をお願いするお寺の手配も行っておきましょう。
改葬を行う場合は、改葬の許可をもらい、必要な手続きを行う、お寺や石材店にも手配を行うなど行う事が色々とあるため日数を要します。
石材店で新設する墓石を頼む場合は2ヶ月ほど期間を要する場合が多いので、3ヶ月程度はかかると考えておくと良いでしょう。
まとめ
少子高齢化にともない後継者問題が出てくるという問題。
そしてお墓が遠くにあり管理がしにくいという問題など、様々な理由でお墓の改葬件数が増えてきています。
改葬をする事で管理しやすくなりますが、費用がかかる、手続きの際に時間がかかる、親族や寺院との話し合いをしなくてはならないなどやるべきことが多くあります。
特に檀家に入っている寺院との折り合いがつかなくなると手続き自体が滞ってしまうので慎重に行いましょう。
先祖を供養したいという気持ちがあるからこそ改葬を行う人が増えています。
葬儀や供養に関するお悩みは葬儀屋に相談する事で適切なアドバイスやヒントをもらえる事もあるかもしれません。
※2020年に117,772件:厚生労働省「令和2年度衛生行政報告例」より